身体の痛みと関係がある?「薬剤性パーキンソニズム」とは
「薬剤性パーキンソニズム」という言葉を聞いたことがありますか?
主に60代~高齢者に多く、手の震え、歩行困難、手足の硬さといった運動症状が現れるパーキンソン病は、ご存じの方も多いと思います。
パーキンソン病と同じような症状を示す病態を「パーキンソン症候群(パーキンソニズム)」と呼び、そのうち医薬品の副作用としてパーキンソン症状があらわれるものを「薬剤性パーキンソニズム」といいます。
今回は、薬を服用する上で知っておきたい「薬剤性パーキンソニズム」について、厚生労働省が出しているマニュアルをもとに、痛みの関連性も含めてお伝えします。
「薬剤性パーキンソニズムって何?」
「痛みと関係あるの?」
と思われた方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
パーキンソン病と薬剤性パーキンソニズム
加齢などによりドパミンという神経伝達細胞の数が減り、運動神経の命令が伝わらなくなることで症状が現れるパーキンソン病。
主な症状としては、「手の震え」「歩行困難」「小刻み歩行」「手足の硬さ」「細かい動きがしづらい」「表情の乏しさ」のほか、「痛み」「便秘」「頻尿(神経因性膀胱)」「立ち眩み・失神(起立性低血圧)」があります。
ドパミン薬で症状の改善が見られる「パーキンソン病」ですが、同じような症状を示す「薬剤性パーキンソニズム」は、ドパミン薬では症状が改善しないことが一番の違いです。
何らかの薬を服用していて、次のような症状が見られた場合には自己判断で服薬を中止したり放置したりせず、必ず医師・薬剤師に相談することをオススメします。
症状の違い
薬剤性パーキンソニズム | パーキンソン病 | |
症状の出現の仕方 | 両側性 | 片側性,右側 or 左側 |
経過 | 原因となる医薬品の中止で改善する | 緩徐進行性(薬で緩和) |
振戦 | 動作時に出現 | 安静時に出現 |
特徴的な所見 | 口唇ジスキネジア※1やアカシジア※2の合併がある。 | 口唇ジスキネジア※1やアカシジア※2の合併はない。 |
抗パーキンソン薬への反応 | なし | あり |
DAT-SPECT※3 | 正常 | 低下 |
※2アカシジア:座ったままでいられない、じっとしていられない、下肢のむずむず感の自覚症状であり、下肢の絶え間ない動作。
※3DAT-SPECT:ドパミントランスポータの密度画像
主な服作用を引き起こす薬品群
医薬品の副作用によって引き起こされる「薬剤性パーキンソニズム」は、主に以下の胃腸薬や抗精神病薬で見られることがあります。
- 抗精神病薬…ドパミンの活性を抑える目的に治療薬としてドパミン受容体拮抗薬が使用され、一部の患者でドパミン分泌量の低下を招きパーキンソン症状を引き起こすことがある。
- バルプロ酸…抗てんかん薬。通常のパーキンソン病と比較してパーキンソニズムの発生率が10倍高いというデータも。
- 制吐剤…嘔吐や胃もたれの改善薬。高齢者、高容量の内服、高血圧、鬱、不安症のある患者において薬剤性パーキンソニズムの発生率が高いとされる。
- 頻尿治療薬…尿失禁や頻尿改善目的に使われるプロピベリン塩酸塩により膀胱平滑筋の弛緩を促し頻尿を改善させる構造が、向精神病薬と類似しておりパーキンソニズムを発生するといわれる。
「薬剤性パーキンソニズム」に治療法はあるの?
「薬剤性パーキンソニズム」は、薬の副作用によって引き起こされるため、原因として疑われる医薬品の中止をすることが治療法となります。
ほとんどの場合、中止から2~3か月で症状が消失しますが、場合によっては半年以上かかることも。
中止しても改善しない場合は、パーキンソン病の発生、あるいはパーキンソン症候群の合併の可能性が疑われます。
痛みとの関連性と薬との向き合い方
ここからは、少し個人的な見解も含まれますが、痛みとの関連性や薬との向き合い方についてお伝えします。
「手の震え」「歩行困難」といった運動症状が現れるパーキンソン症状と痛みとの関連性はあるの?
「薬剤性パーキンソニズム」の大きな特徴として、薬の副作用で筋肉が硬くほぐれにくいことが挙げられます。
当院では、筋肉の緊張が痛みの原因であると常にお伝えしています。
つまり、筋肉が硬くほぐれにくいことで、痛みにつながるだけではなく、痛みや症状の改善に時間がかかるということ。
減薬・断薬をしたほうが良いのでしょうか?
薬のことをとやかく言える立場ではありませんが、減薬すればするほど体調がよくなっていく人が多いと感じています。
よくなるために飲んでいるのにおかしな話ですよね。
飲まないといけない理由があれば別ですが、効果のない薬には副作用しか起きないということを心にとめておいてください。
自分が薬剤性パーキンソニズムなのかよくわかりません。
気になる症状がある場合、まずは担当医師、薬剤師に相談してみましょう。
私も、身内を病院に連れていく機会が増え、医師や薬剤師、看護師の方々の話を聞くことが多々あります。
注意深く聞いていますが、「薬剤性パーキンソニズム」についてどれだけ理解があるのか?人によりけりだなぁという印象です。
人に言われるままではなく、自分の体は自分で守るのが基本だと考え、ご自身でも薬の知識をつけ、薬とうまく付き合っていきましょう!
今回の記事を機会に、ぜひご自身の服薬について一度深く考えてみてくださいね。